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2006年10月7日(土) 06:59

PLCを巡る戦いと学生としてのプライド

!注意!
この下にはかなり電気的にマニアックな話が展開されています。
夢のあるお話が好きな方は↑のリンクをお辿り下さい。



世の中には”電力線通信”(PLC=power line communication)という技術があります。
端的に言いますと「コンセントにプラグをグサリとさすとネットに繋がる」技術、という感じです。詳しくはこちら

電源系統やら電話網と分けてつくる必要がないため、東南アジアなどでは高速通信の普及によく使われていました。(大体速度の出ないADSL程度かな? 下り2Mbpsとか。)
しかしここ最近めっきり聞かなくなったと思ってたら(*)水面下で攻防があったようです。

[コンセントがネット端子に 電力線通信の解禁は不透明(asahi.com)]
あの朝日も気になるみたいだなぁ。まぁ心配事(難癖)を忘れないのが朝日クオリティですが。

んで、どうなったかというと、

[高速電力線通信、屋内利用がついに解禁へ 4日付けで法改正(IT Pro)]


しかし、朝日的な懸念以外にも「本当にいるんかいな?」という疑問も確かにある。

ここであえてわたしは「必要だ!」と声を大にして言いたい。
先の記事の筆者はソフト的な発想でメリットを見出せない、という批判を浴びせていたが、ハードの面から考えると有効転用が可能な技術だと考えうるからだ。
背景として「ユビキタス社会の実現に向けて」という前提を持つと、例えば

@IT家電の設置が容易になる(FixedLANのフレキシブル度が格段に上がる)
家中にLAN配線を敷く訳にはいかないし、高速伝送が要される様なケースが増えてくればBluetoothで対応しきれなくなるだろう。
無線LANの一般家庭への導入は敷居は高いことを考えると「ファミリーネットワーク」のインフラとしては最適だろう。

A「電気がくればネットに繋がる」という図式
これはかなり拡大解釈だが、例えば電車のパンタグラフだって送電しているのだから移動中の電車においても高速通信が可能になるだろう、という話。
(これは二年秋の研究論文で提案しているので暇な人は見ておくれ。ただし若かりし頃で体裁がヒドイ出来。)


さておき、”電子の園”SFCに籍を置く学徒として「この技術には可能性がある!」と注目してきた訳でして。
しかし三年の春ごろにゲストで来た外国の先生に「非常に古臭い技術で速度も出ないし、今じゃ西欧じゃ誰も着目していない」的なことを言われてうすらショックを受けてた訳ですよ。

英語力が足りなくて(というか頭の中がまだ整理されてなかったので)反論できなかったが、今なら言える!


どうだこのやろう、IT先進国なめるなバーロー!www(ごめんなさい)

どうでもいいですが、情報通信の世界の有名人で「ジョン・ペリー・バーロー」という人が実在します。バーローww




*これは少し語弊のある表現。個人的には追っていたので「誌上をにぎわせなくなった」という意味合い。

written by sofuwe [授業・研究] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(14)]

Comments

『「古臭い技術」』

いやだから周波数利用帯域の違う国ではとっくに実用化されてたんだってば

written by forest

『リプライ(1)』

(嗚呼サイズエラーで書いたやつがdだ・・・(涙))

日本でPLCが普及しなかったのはさっと考えてみると例えば
・ISDNやADSLのようなアナログ電話線に取って代わる技術が普及した
・FTTHのような次の技術にも漸次移行できている
という「今更需要がナサス」的理由と、
・干渉が起きる
・精緻な電力網に割り込んでくるんじゃない
といった「敬遠」的理由があるからだろうねぇ。

つづく。

written by ゑ

『リプライ(2)』


>周波数利用帯域の違う国
普及している国はどちらかというと周波数の違いよりもインフラの種類違い、という感じを受ける。
例えば通信の解放が進んでいないヨーロッパのスペインなんかでは未だに電話線が主力で、それの対抗馬としてPLCが主戦級を張っていたりする。
アメリカが未だにCATVなんぞ使っているところを見ればPLCを模索するのも分かるし、東南アジアなんかは完全に「そもそものネット普及」に適しているからだろう。(電話線なんかそもそも一家庭に一本じゃねぇという話)
そう言った意味では実用化されている。

故に日本でこれらの「面的普及」目的で導入する(実用化)、というのは当然ナンセンスであるが、そこだけで切り捨ててはいけないと言いたい訳ですよ。少なくとも”応用化”の段階からの導入を検討しているんだし。

まだつづく。

written by ゑ

『リプライ(3)』


例えば山間部なんかには通信インフラをわざわざ新しく敷設しなくてもよく、普及目的でも需要はあるだろうし、都市部では「ラストワンマイル」の自由度を格段に上げる「ユビキタスネットワークのインフラ」としての応用を利かせることができるのでは、と考え得る。要は面白い技術なのだ。

つまり古臭いといわれて嘆き悲しんでいるのではなく、「既に普及している、だから古臭い技術だ。つまらないいらない。FTTHがあるじゃないか。」という断罪は可能性への模索を握りつぶす思考停止だと思うし、それは研究をする上では憤るところだ、と言いたいのであります。

written by ゑ

『問題解決が先です』

「電力線通信の解禁」とかいう報道は、屋内限定の話です。
インターネットに接続するためには、建物の中までプロバイダと
ADSLや光ファイバーで結ぶ必要があります。理論値200Mbps
なんて出るわけありません。誇大広告です。
問題点について簡単にまとめてみました。是非ご覧ください。
PLCに対しての印象が変わるかもしれません。
http://nonomura.iza.ne.jp/blog/
とにかく推進派メーカーから出てくるお花畑記事に騙されないよう、色々情報を見極めることが必要です。
欧米では撤退するメーカーも続出しています。
恐らく尻つぼみになる可能性が高く、開発に資金を投入したメーカーの株価が心配です。

written by 野々村

『リプライ(2-1)』

>野々村様
はじめまして、コメント有難うございます。
実は多分知り合い以外からは初めてのコメントだと思われます。
検索エンジンかなぁ。どきどき。

さて、立場によってかなり主張が異なるとは思いますが、以下「ギークの世迷いごと」ぐらいにでもよいのでお読み頂けると幸いです。

回線速度についてなのですが、200Mbpsも実測で出ないのは仰る通りでしょう。干渉を受けやすいインフラであることには間違いありません。
でもまぁ理論値としては正しいのではないでしょうか。算出した理論値と公表したものが異なる(意図的に変えた)、計算を間違えたとなれば詐欺罪が適用されるでしょうが、ベストエフォートを誇大広告と切って捨ててしまうとありとあらゆるISPが廃業しなければなりません。(すわというとき、企業倫理としてエフォートが行われているかの如何で公取委送りは可能でしょう。)

(つづく)

written by ゑ

『リプライ(2-2)』


既にFTTHで引き込める今、速度で後塵を拝すことは明らかですから、それで争うのは企業としてないでしょう。それこそ株価が心配です。
この技術を進めてほしいのは速度以外の”面白さ(適用範囲の可能性)”にあります。それを追求する手(研究)を止めるのは
思考停止であり、提灯記事に踊らされているのと同じ状況だと思うのです。
欧米では熱が冷めて撤退が始まっているPLCですが、使用している周波数から電源容量、建造物の種類から通信技術と電力供給の技術と信頼度の高さ、果ては山間部へのディバイドなど他国を事例として比較するに難しく、それだけでも研究価値はあると考えられます。
例えば電源にしても、日本の企業の動力以外は多くの家庭で単線交流100Vを使用しており、何だかんだいって規格はかなり揃っていてなじみやすいし、転用しやすい。

(まだつづく)

written by ゑ

『リプライ(2-3)』

インターネットが出だした頃日本は電話線という高級占有回線にデータを流すこと自体が違法であり、けしからんといわれていました。そんな”チープな発想の未知なる”技術が圧倒的に社会を変えつつあることは論を待ちません。そういった反発に立ち向かっていったのがgeekたちであり、物理層を進歩させるために必要な精神だと私は考えています。


問題解決が先。その通りだと思います。しかし、「解決」と「断罪」「諦め」は同義ではない。
問題を解決するにはまず何が問題であるかを突き止め、思考を停止させないで解決方法を探りにいくことが切捨てやネガティブキャンペーンよりもイノベーションには必要ではないかな、とも思います。

written by ゑ

『タイトルなし』

ゑさん、こんばんは。reply ありがとうございました。
今回のPLCに関していえばメーカーのごり押しの感が強すぎるとはお思いになりませんか? なにか利権に絡んだ。
ですのでいい加減なままで認可を勝ち取るよう進めてきたと思えます。CISPR委員会の出した値が誤りであることは各方面から指摘されているのに、それを総務省はがんとして認めないわけです。
さらにメーカーは良いことばかりを宣伝し、悪いこと、不利なことには全て蓋をしています。
簡単に繋がるとか、無線LANの4倍の速度とか。ウソばっかりです。
>単線交流100V
とありますが 日本の家庭は単相3線式200V です。詳しくは当方のBLOGに書いてありますが
A―― +100V
C――  0V
B―― −100V   +−は交流式なので反転もします。
という感じになっています。
http://nonomura.iza.ne.jp/blog/entry/39641/
をお読みください。

written by 野々村

『タイトルなし』


PLCが便利だということは何も否定していません。安全かつ確実性があり他の放送通信に影響を与えないのであれば誰も反対しないでしょう。現実としてそうではないので幻想(誤った情報に踊らされている)を持っていると思われる方のBLOGにコメントを貼っています。正しい判断をするには一方的な情報ではできないからです。

written by 野々村

『タイトルなし』

一部訂正ですがNECがLC内蔵型VoIPアダプターを出していましたね。
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2006/10/03/664974-000.html

仕組みはよく分かりませんが。

written by 野々村

『タイトルなし』

あっ すみません。 コメント書くところ間違えました。
(^^;)

written by 野々村

『リプライ(3-1)』

>野々村様
こんにちは、私のような社会に謀反を起こしかねないギィク如きに再びコメントを頂けまして光栄です。重ねて御礼申し上げます。


さて、私の最終的な結論としては「思考停止することは問題である」ということなのですが、これはPLCの是非如何に問わずいえることだと考えています。
メーカーがごり押しする(自分で理論値を算出したわけではないので真っ赤なウソかどうかは判断しませんが)、というのは商品を売る上での当然の行動なので”合法範囲であれば”問題はありませんが、研究者が研究の手を止めると「有効活用」の手立てだけでなく「具体的にどのように危険で、どのくらいの頻度で問題が起こり、その影響がどれだけ波及するか」といった危機想定を提唱する研究まで止まることになります。「枯れた技術」として飽きられると困るのはそう言った面もあります。研究者が危険であるという報告を上げなければ総務省もその想定を自分達でし難いでしょうから、やはり問題です。
(つづく)

written by ゑ

『リプライ(3-2)』


功罪どちらも一側面だけ見てしまうこと、批判的になれないことは思考停止であり、どちらも危険(損)です。そう言った意味で研究者にはある種のケンカを売らなければなりません。「まだ研究することはたくさんあるかもしれないぜ」と。それが当該記事の意義です。

>単相3線式200V
引き込みまでは主にこれですが、未だに多くの一般家庭の電路として単線交流100Vが使われていると記憶しているのですが・・・

>幻想
といわれてしまっては心外ですが・・・まぁ夢というか希望的観測であることは否定しません。
ただ、夢をなくせば人間は進歩しないし、研究は動機をなくし、研究という名の社会的積み重ねが行われなくなります。これは文化、ひいては文明の終焉です。

だからこそ誤解を恐れず、ギィクは戯言を投げかけていきたいと思います。

written by ゑ

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