業者との直接契約に係るリスクについて

業者と保護者の直接契約締結に関するリスクについて
(主に校外学習行事費等における契約について) 書きかけ原稿

1.はじめに
従来、体験学習や修学旅行については多くの学校が「学校―業者」間で契約を結び、学校が保護者から資金を集めて業者に支払い、会計を整理する業務を行ってきた。しかしながら煩雑さと業務負担軽減を目論み、学校があっせんした業者と保護者が直接契約を結ぶことによって、会計を省略させるといった事例が増えてきている。
しかしながら直接契約締結にはリスクも存在する。本稿ではそのリスクに触れながら、安易に切り替えに踏み切り大きな事態を招かないよう、考察を進めていく。

2.直接契約の締結と校外学習行事等について
業者と保護者が直接契約を結ぶということで何故会計報告を省略できるかというと、契約行為の主体に学校がいなくなるからである。逆を返せば、保護者はどの業者とどんな契約を結ぼうとも、保護者の判断により決めることができるようになる。要は、学校側から業者・保護者双方に強制的な支持が差し挟めなくなるのである。
これにより、次のようなリスクが生まれる。

2.1. 異なる業者を選定される
学校としては特定の業者をあっせんすることは可能だが、契約行為を保護者に強制させることはできない為、保護者が学校が目論んだ業者とは異なる旅行業者を選ぶことも可能 であるし、場合によっては業者と契約を結ばないという選択を取り、保護者送迎・同伴等による完全自費・自力参加をすることも可能になる。あっせん業者であれば「旅行中は学校の指示に従うこと」といった条項を契約に盛り込むことも可能だろうが、それ以外の選択をした場合、当然ながら学校が計画している旅程をこなすことが困難になる。
また、業者との契約が不調に終わった等の理由から、修学旅行に参加しないという選択肢を保護者に与えることになる。契約は個人の経済行為ないしは思想の自由にも関わる為、こういった場合でも単位ないしは評価を下げるといった措置が不法行為に当たる可能性もあるため、代替措置を考慮しておく必要がある。
なお、これは児童生徒だけでなく、教職員についても同様である。

2.2. 契約の内容に口を出せない
学校はあっせんしたというよしみ以外は、当該契約に口を出すことはできない。その為、例えば「暴れる等で旅行を中止させ、学校に戻させる」といった指導も、旅行業者が旅行の中断による損害賠償を求められるのを恐れ、ストップをかけてくることも考えられる。この場合、学校側は契約の主体ではないので、手を出すことはできない。逆に旅行業法に基づき契約を途中解除される、警察を呼ばれる、といった事態を招いても、学校は口をはさむことはできない。
また、アレルギー対応等で個人ごとに請求価格が異なることも、市場サービスである以上、選択業者によっては生ずる可能性があり、保護者から事前に了解を得なければならない。

2.3. 特定業者をあっせんした理由が問われる
会計報告の必要性がないといっても、特定の業者をあっせんするということは、場合によってはその業者をあっせんした理由を問われる可能性も低くはない。下検分を称した接待旅行といったリベートは常に疑われるところであり、結局のところ学校は数社ほどプランを業者から提出させ、見積を保存しておき情報公開に備える必要はある。

2.4. 結局は会計報告をする必要性も?
体験学習で使う雑貨などで、学校側が用意しなければならない物品等が発生した場合、公費で賄えればよいが、そうでないようなものを購入するのに業者にお願いできない場合がある。最悪、後日保護者から実費を集金するようなことがあれば、会計報告はその分を行わなければならない。

2.5. 結論
以上を考慮すると、直接契約については回避策を講じなければいざ前述のような潜在リスクが事案となり、ひとたび起きてしまえば大きな問題に発展する危険性を捨てきれない。ひいては全学年一斉に同じ場所に行く、という従来のスタイルを解いて小規模グループ単位で業者の企画旅行に行って単位を認定する、という手段を取らざるを得ないことになっていくと思われる。直接契約手法の横行とリスク回避の行きつく先は「修学旅行のパック旅行化」ともいえる。

3.学年費について(おまけ)
こういったケースは学年費においても同様と考えられる。ただし学年費の場合、一般的なドリル・副教材類の購入について、入学準備品や制服・体操着のような直接契約が可能であれば、保護者にとっては選択の幅は広がるし、準公金の取扱額が減ることも考えられる。結局のところスポーツ振興センターや体育読本の購入が横浜市ではある為いくらかは必ず集めて会計報告をすることにはなるのだが、金額が少なくなることで会計事務の負担は多少軽減される。考えるべきは、「どこまでを直接契約にするか」である。

3.1. 線引き
1割程度はスポーツ振興センター掛け金や体育読本に使う資金として、残り9割方を業者に任せる場合、「年間の購入計画を年度当初に全て綿密なものを作成して一括契約を結ぶ」「学校側と協議して授業に必要な物品を供給し続ける委託契約を年度当初に結ぶ」といった契約形態が想定できる。
これとは別の手法として、6割方上記方法や「都度物品購入契約を結ぶ」といった契約形態で業者に任せ、残り3割を納入金として集め、従来通り細かな物品の購入について会計報告を行う、というハイブリット的手法も考えられる。2.4の懸念事項をあえて初めから行うことで、学校としての選択の幅を確保しておく意味合いがある。

3.2. 物品の購入について
教材として物品を指定する場合、基本的には仕様を指定して用意をしてもらうことになる。保護者に契約の自由がある為、同等品であれば(授業で必要な仕様を満たせば)何を用意してきてもよい、ということである。例えば「100円均一で買ってきた方が安いのではなかったのですか」といった問い合わせについても、今後は自身で揃えてもらうようになるので希望に添えることが可能になる。
従って、学校としては「必要な仕様」とを保護者に提示する必要がある。

3.3. 問題点について
問題も当然存在する。物品が用意できない場合があることだ。これは物品を用意しなかったという保護者側の都合(多忙・怠慢等)であったり、町中からその物品が消えて購入できなかったりといったことが想定される。こういった原因をさしおいても、物品を授業までに揃えられないといった結果が発生するのだが、これを忘れものと判断して評価を下げることは前述のとおり難しいし、公費による一部児童・生徒への補填も公平性の観点から難しい。
こういった事態を防ぐためには、3.1の項の後半で述べたハイブリット的手法によりあっせんする物と揃えてきやすいものを選別するといった柔軟な対応がとれるようにしておく必要がある。

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こうしたリスクが避けようもないことから、個人的には煩雑なくらいなら会計を学校で行った方が、リスクヘッジが取れている気がするんだ。。。

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